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今週の風の詩

第3951号 小さな鉢植え(2024.11.3)

小さな鉢植え
若林真樹

 ひろい空が見たい! でもそれがすぐにかなわない時には、ベランダに出て
山野草の小さな鉢植えを眺めることにしている。

山野草とは山や野に自生している植物のこと。その素朴なたたずまい(人の思惑など知らぬといった風な)と、ただ生きるという潔ささえ感じる小ぶりの葉や花は、とても好もしい。
なにより、その生命力たるや!
2ヶ月前、フリマサイトで山のすみれを譲っていただいた。3日間の長旅を経て手元に届いたとき、それはかなりくったりとし、葉も一つ咲いていた花も、なにがなんだかといった状態だった。しかし、これは山野草である。急いで鉢に植えた。
仕上げに水をかけると葉は土にべったりとはりつき、花は埋もれてしまうほどだったが、そのまま日陰にそっと置いた。
数日間は毎日のように様子を見、水やりもしていたが葉は起き上がらない。
が、ある程度日が過ぎたころからは、もう自然に任せておくことにした。
それは面倒になったから(それも少しはあるが)ではない。これまで、鉢をかえてあげる、根を整理してあげる、など草花なら喜んでくれるであろう手をかければかけるほど、山野草は弱り、ついには枯れてしまうことが多かったのだ。
放っておかれるほうが、ずっと彼らのためなのではないか、との思いがあった。
それから1ヶ月後、果たしてそれが功を奏した! 
久々にじーーっと眺めてみると、土にまぎれていた一輪のすみれは
すっと立ち上がり、まあるく種をふくんでいる。そして根元からは青々と新しい葉が生え始め、さらにいくつかの小さなつぼみも見えた。
やはり、と野生の力に改めて感心した。
そんな山野草の小さな鉢を眺めるとき、その体のうちにあるたくましさ、強さ、そして根がはられている土から大地、そこからぐぐっと空へとつながっているのがみえるような気がする。
それはここから見上げるより、もっとずっと広くて深い空なのだ。

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