今週の風の詩
第3937号 ふうせんかずら(2024.7.28)
街で時々見かける緑のカーテンといえば、ゴーヤが多いようだ。びっしりと茂るので日陰にはなりやすいが、たくさん実がなりすぎて持てあますこともあるだろう。
私のおすすめは「ふうせんかずら」である。その実はまるで緑のぷっくりした紙風船のよう。それがいくつもなって、風に揺れている姿はなんともかわいらしい。
春先、初めて挑戦したときには芽出しが遅くて気をもんだが、気温が上がるにつれて無事に芽を出した。初めての作物を育てるのは、わくわくするものだ。やはり実際にやってみないとわからない。ぎざぎざの薄い葉が重なり合っているのも、わき芽が旺盛に伸びてあっというまに緑の壁と化すのも、白くて小さな愛らしい花が次々と咲くのも、育ててみて初めて実感できたことである。
世の中が暑くなるころには薄い皮がふくらんでくる。紙風船のように四角い緑の実がならんで風に揺れるさまを見ていると、音はないのに鈴の音が聴こえてくるようだ。それだけで涼しくなる気がする。
実はふくらんだまま、やがて茶色く枯れ、落ちもせずそのままぶらぶらとぶら下がっていた。手に取ってぱりぱりと割ると、中から種が取れる。直径五ミリほど、黒くて丸い種だが、一部が白くハートの模様になっているのもおもしろい。
我が家の狭いベランダに日陰を作るカーテンは、洗濯物の陽当たりを奪い、実はやっかいものですらあるのだが、それでもついつい育ててしまう。毎年、ベランダの柵に沿ってツルを這わせ、夏の風物詩となっている。
第3936号 朝採れささげの味(2024.7.21)
旅をするとその土地の野菜を買ってエコバッグ一杯に詰めて帰ってくるのが我が家のルーティン。なかでも飛騨高山の朝市や直売所は大のお気に入りで、年に数回通っている。ほうれん草、春菊、じゃがいも、ねぎ、赤かぶ、トマト、なすなど、豊かな環境で育った採れたての野菜はどれも目を見張るほど美味しく、こんな野菜がいつも手に入ったらね、と常々話している。
初夏に同地を訪れた際、種苗店であきしまささげの種を見つけた。ベランダ菜園で育ててみようと購入し、8月上旬少し遅めの種蒔きをした。薄茶色に焦げ茶の虎のような模様の入った丸い種は、みるみるうちに芽を出して、あっと言う間に可憐な薄紫色の花を咲かせた。
それからしばらくして、台風が去った朝、散った花を寂しく眺めていると、大きく平らな実がいくつもぶら下がっているのに気がついた。鞘の紫色の縞模様が、葉っぱの間で迷彩柄のようになって目立たないうちに大きくなっていたのだ。寒暖差により濃くなるというその模様がよく出る季節になったのかもしれない。
ぷっくりと膨らんだ実を摘んで茹でて食べた。
美味しい!甘い!
ついさっきまで蔓にぶら下がり朝日を浴びていたあきしまささげは、綺麗な緑色に茹ってシャキッとハリがあり、甘く、青い命の味がした。
美味しい野菜が手に入らないなんて言わないで自分たちで育てないとダメだね、との妻の一言が、我が家の野菜との新しい付き合い方を予感させた。野沢菜、かぶ、ほうれん草。まずは冬野菜の種蒔きに心を躍らせている。
第3935号 とある街の文房具店の話(2024.7.14)
第3934号 「よお、元気?」(2024.7.7)
第3933号 土地と人と空間に感謝して(2024.6.30)
第3932号 珈琲の香り(2024.6.23)
そうなんだと思いながら、きっとやめないなと思う。 | ||||||||
子供たちが小さい頃、動物園のカフェで飲んだ。 | ||||||||
子育てに忙しい時、ほっとする一杯だった。 | ||||||||
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第3931号 蘇った万年筆(2024.6.16)
第3930号 真珠のネックレス(2024.6.9)
6月生まれ、ってこともあるけど、清楚さと潔さを感じるから。
可愛いしね。
これほどシンプルなデザインはないってくらい、飾り気のない一粒真珠のネックレス。
シンプルだけど、実際には壊れやすい繊細な作りだった。小さなビスを真珠に付け、留め具を介して鎖に繋ぐのだが、なぜかはずれ易い。何度か自己流で直したものの、気づくと真珠が落っこちていたり。
幸い、その唯一の一粒を見失うことはなかった。
修理代を払ってまでするかなぁと長く放っておいたネックレスを、ついに修理に出し、受け取りに行った。包みながら、お店の方が
「きれいな真珠ですね」と。
「私の誕生石が真珠で、これは結婚前に主人がくれたものだから、30年以上前のものなんですよ」「まあ、30年とは思いませんでした」
思いもよらないことを言われ、私も要らんことをまたしゃべってしまった。
30年は長い。
長いのに、確実に過ぎる。
壊れたけれど、真珠も金の鎖も、同じ艶と輝きを保っていて、なんだか羨ましい。
え?真珠一粒だけ?なその姿に、当時は喜びつつ物足りなさを感じてしまっていたけれど、年齢に関わらずいつまでも身につけられるそのシンプルさが、今は嬉しい。
お店の方によると、現在、金が高騰しており、プラチナより高価になっているのだとか。
今回の修理で外したビスは18金だから、それだけでは1gに満たず買い取れないが、よかったら、何かお家にある使わなくなった金製品と合わせてお持ちください、とその小さなビスも小袋に入れて返してくれた。
探してみようかな。
貴金属とはほぼほぼ縁はなく、引き出しからお宝は出てきそうにないけれど、今年は早めに片付けに取りかかろうかな。
うん、我ながら良い心がけだ。
とりあえず、明日は久しぶりに、復活した一粒真珠を首にかけよう。
第3929号 タイでの出来事(2024.6.2)
一人暮らしの息子は、居酒屋で真夜中までアルバイトをしたお金と高齢の祖父母にもらったお小遣いを旅行資金にした。
無事に帰国し、京都の下宿に戻った息子は、タイでの様子を家族LINEのグループ通話で語りだした。長野にいる私達夫婦だけでなく、東京にいる娘も同時に通話に加われるとは、なんとも便利な時代になったものだ。だが、息子の話を聞いて、耳を疑った。
なんと、現地のタクシー運転手にしっかり騙されているではないか。とても親切にしてくれて、良い人だとすっかり信じきっていた息子達。
育て方が悪かったかな〜とショックを受けていた私に、後で娘が一言。
第3928号 わくわく皇居ラン(2024.5.26)