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今週の風の詩

第3952号 水彩画(2024.11.10)

水彩画
ちあき(ペンネーム)

『娘に絵を習わせたい。』娘が幼い時、突如として思い立った。引っ込み思案な性格の我が子の好きなことを伸ばしてあげたいという親心からだった。
 早速、体験教室に参加した娘が一言。「ママと一緒がいい。」
 ご夫婦で絵画教室を営んでいる先生方は、母親も一緒に水彩画を習いたいという無謀なお願いを快諾してくださった。
子どもたちの中にひとりの大人がいる。どう思われるだろうかと不安があったが要らぬ心配だった。
 子どもたちは教室に着くやいなや自分の絵の制作に取りかかる。集中。私のことは気に留まらないようだ。
 いっぽう私は白い画用紙を前に固まる。何をどうしていいのか最初の一手が出ない。
『自分の好きなモチーフを描きましょう。』と言われると冷や汗が出る。好きより描きやすそうなモチーフを選んでしまう。それでも何とか仕上げた水彩画に達成感を感じる。
 ふと、周りの子どもたちを見回すと、迷いのない線、しっかりした筆触、大胆な着色。我が子も例外ではない。子どもたちから学ぶことがたくさんあった。
 通い続けていく中で、自分の好きな物や興味のある物が見えてきたのは嬉しい発見だった。
 様々な場所へ行く屋外スケッチの授業も楽しみのひとつである。
 こんなにじっくり風景を観ることはなかった。季節の移ろい、草花の香り、そよぐ風、野鳥のさえずりや小川のせせらぎ。その場で感じたことを表現したい。描いてみたい。体裁を気にせず、好きな絵を。自由に。
 娘が成長した今、私は別日の大人だけの授業に通っている。忙しい日常のほんのひととき。私が何者でもない自分にもどる大切な時間。


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