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今週の風の詩

第3988号 じゃくじゃくしてる。(2025.7.20)

じゃくじゃくしてる。
睦月(ペンネーム)

私は、自他共に認める食いしん坊である。

先日、長年欲しかったオーブンレンジを手にいれて、嬉しくて舞い上がった私は早速いそいそとクッキーを作った。正確に言えば、クッキー(もどき)を作った。
普段から目分量をモットーとし、「大さじ2」「小さじ1.5」等をまるで守らない私は、果敢に「なんとなく」の分量でクッキー作りに挑んだ。
その結果、クッキーになるはずだった素材たちは、あまりにも硬度を増した砂糖味の板へと変貌を遂げたのだ。
出来上がったその板をオーブンレンジから取り出した時の私の顔は、さぞかし妙ちきりんであっただろう。

そうはいっても、出来上がったクッキー(もどき)には何の罪もないので、もちろん美味しくいただきたい。
がり、じゃく、とクッキーを噛むにしてはいささか獰猛な音を立てながら、勇ましく平らげる。とほほ。
「でもさぁ、初めて作ったにしてはさぁ、上出来だよね。味はさ、味は。」
私は自分に言い聞かせるように、同じくごりっ、じゃく、と音をたてる夫に話しかけた。
夫は一瞬、お、という顔をして、「それよそれ、」と頷いてみせる。なになに。
「そうやって自分を褒めてあげなよー。それでいいんだよ。」

私はなんだか拍子抜けした。
普段は、「何事も頑張らなきゃいけない」「ちゃんとしてないとダメだ」と自分を縛りがちで、周りから「まじめだねぇ」と言われる私は、力の抜き加減を知ることが至極苦手で、多方面でハードルを高く設定する癖があった。目分量で調理を開始する割には、クッキーも「クッキーのあるべき姿」でなければダメなものだと思っていた。
だから、夫のその一言を聞いた時に、「あ、いいんだ、これで。」と胸がぽっとなった。
同時に、普段はふざけてばかりで本当にどうしようもない人だけれど、私を私のままでいさせてくれる言葉をすっと差し出してくるなんて、ずるい人だ、と思った。

じゃくじゃくしたクッキーは、とても甘かった。

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