今週の風の詩
第3981号 誕生日には花束を(2025.6.1)
誕生日には花束を
yatch(ペンネーム)
ここ3年、私と義母はお互いの誕生日に花を贈り合っている。 きっかけは3年前、私の乳がん治療だった。 化学療法が始まり一番気分が落ち込んでいた時期、奇しくも私の誕生日だった。 その日夫の実家に帰省する予定が、娘の発熱により帰省できなくなった。 夫がお詫びの連絡を入れると、翌日義両親は誕生日ケーキと大きなアレンジメントフラワーを持って来てくれた。 それはピンクと紫と緑が合わさった、柔らかな色の美しいアレンジメントフラワーだった。 それまで私は花に興味がなかった。 でも届けられた花は、治療のつらい時期をただ耐えて乗り切るだけの私の生活に、温かな彩を添えてくれた。 生き生きとした花たちを見ていると、どこからかポジティブなエネルギーを感じて心が元気になった。 私は生まれて初めて花の美しさとエネルギーを知った。 義母にお礼のメッセージを送ると、意外な返事が返って来た。 私は以前、母の日にブーケを送ったことがある。 それはちょうど義母が介護疲れで気持ちが沈んでいた時期で、送った花にとても癒されたのだそうだ。 義母はあの時の自分と同じように、花が私の癒しになればとう気持ちだったようだ。 私は涙が止まらなかった。 結婚して12年、お世話になってばかりだったから。 「早く元気になって恩返しをしよう」そう花を見て心に誓った。 あれから3年、共に秋生まれの私達はお互いの誕生日に毎年花を贈っている。 この秋、義父に病気が見つかり手術を受けた。 術前の検査から付き添い、心身ともに疲れている義母の様子が気になった。 私と夫はそんな彼女の誕生日に、今までで一番大きな花束を予約した。 誕生日当日、幸いにも義父が退院できることになった。 花が届けられた夕方、お礼のメッセージが届いた。 義母は不安な日々の中で自分の誕生日をすっかり忘れていたそうだ。 恩返しが出来ているかは分からない。 でも少しでも早く2人の元気な姿が見れることを心から願っている。 |
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