今週の風の詩
第4005号 よってぃん(2025.11.16)
中学生男子の朝の声は聞き取りづらい。
小さい頃から早起きで、朝から饒舌で元気いっぱいモリモリ朝食を食べていた息子はいずこ。
起きない、起きても無言、寡黙、話しかけても無視、不機嫌、寝ても寝ても眠いようだ。何があっても朝ごはんはしっかり食べていたのに、「朝からこんなに食えると思う?」と聞きたい情報はよく聞こえないのに嫌味な声だけはしっかり聞き取れる不思議。
どうしちゃったのかな。何なら朝食べてくれるかな。タンパク質もエネルギーもとれて、食べやすくて、美味しいものを考え抜いた末に生まれたヨーグルト的な何か。水切りしたヨーグルトにゼラチンと生クリームを混ぜただけなのだが、どうやら気に入ったご様子。
「うまい、いくらでも食べられる」低い声が少し高くなる。
「これ、なんていう食べ物?」
「いやぁ適当に作ったからなぁ。ヨーグルトプリン?名前つけてよ」
きっと返答はないと思いながら聞いてみたら
「…よってぃん?」
あなた今、よってぃんと言った?ひらがな?カタカナ?前のめりに聞き出したい気持ちをグッと堪えて、反抗期の中学生男子が低い声で一言小さくボソリと呟いた「…よってぃん?」を愛おしむ。その声は朝日に包まれてキラキラと食卓の上で優しく浮遊していた。
白くプルプルした佇まいは正にヨッティン然としており、息子のネーミングセンスに唸った。あぁなんだか久しぶりな息子との幸せな会話だ。
「いいね、今日からこの子をヨッティンと呼ぼう。また作るね」
それから…かどうかはわからないけれど朝スムーズに起きるようになり口調が穏やかになりつつあり、日夜筋トレに勤しんでいる。
店先で旬のフルーツを見かけると付け合わせに合いそうだと浮かぶ白いプルプルと「…よってぃん?」の声。
ヨッティンなのかよってぃんなのか聞いてみたら笑顔で聞き慣れ始めた低い声で「まろやかさを表現している」と教えてくれた。
よってぃん、また作るね。




