今週の風の詩
第4014号 若葉マーク(2026.1.18)
若葉マーク
小林瑞枝
はたちの息子がようやく免許をとった。
ちいさな頃からなにをするにも時間のかかる子である。
ねがえりも、歩きはじめるのも、保育園になれるのも、のんびりしていた。
二十年たったが、車の免許もその例にもれない。
授業に寝坊する。ペーパー試験に落ちる。
春も夏もあっというまに過ぎてしまった。
最終ステップの免許申請の際は、メガネを忘れ出直しになった。
寒い季節になっていた。
さっそく若葉をぺたぺた貼りつけ、息子は運転しはじめた。
制限速度を守り、そろりそろりと発進する車は、彼そのものである。
雨の降る日も、雪の降る日も、かわらない。
息子には樹木の名をつけてある。
実がならなくても、花が咲かなくても、裸木になっても、根をはって空を見上げているだけでいいんだよ、というメッセージをこめた。
若葉マークがよく似合う。
風にあおられても、鳥につつかれても、他人に見られなくても、樹は生きてゆく。人間の何倍も忍耐づよい。




