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今週の風の詩

第4023号 歴史の証猫(2026.3.22)

歴史の証猫
野村齋藤(ペンネーム)

古びた和菓子屋の木の棚に鎮座する片手を高く掲げた招き猫。
その毛並みは薄れても、その眼差しは時代を越えて、てらてらと輝いている。

初代は言った、「夢を描きや」と。
店を開いたあの日、寒空の下、小さな屋台にこの猫を置いた。
お客が一人、また一人、小銭を握りしめた手が、生きる糧へと変わる夜を重ねた。

次の代は言った、「耐え忍びぃ」と。
戦の影が街を覆う頃、店も品物も一時消えた。
けれどこの猫は残った。埃をまとい、暗い倉庫で待っていた。
夜明けが来るその日まで、希望を捨てずに祈り続けた。

三代目は言った、「共にわろえや」と。
復興の風が吹き、街が賑わう。
店に戻った猫の隣で、子供たちが笑い、お客もつられて笑う。
その平和の香りは、猫の手をより高く掲げさせた。

四代目は言う
「その招き猫はな、ただの置物やない。
夢と忍耐、ほんで喜びを刻んだで、一族の歴史の証猫や」と。

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