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今週の風の詩

第4028号 出羽の国から(2026.4.26)

出羽の国から
森響平


4月末、蔵王温泉の地には本格的なグリーンシーズンが訪れ、まっすぐな日差しが新緑を鮮やかに照らすようになった。私は温泉旅館の一室で、画面に向かって語りかけていた。国語の授業なのだ。

 私の勤務する高校では毎年「オンライン授業デー」を設けている。今後またウイルス禍に見舞われても教育活動を継続できるよう、その予行としての授業日だ。

 今年もゴールデンウィーク谷間の平日に設定されると決まったとき、私の中に妙案が浮かんだ。直前の休日を使って遠くに出かけ、旅行先から授業を配信してやろう。前々から気になっていた山形の立石寺、蔵王温泉をめぐるプランを計画し、すぐに宿を手配する。ノートパソコンと教材を詰め込んだトランクを引きずって、デビューしたばかりの新型・山形新幹線に飛び乗った。立石寺は松尾芭蕉が紀行で訪れた場所であり、名句「閑さや岩にしみ入る蝉の声」はここで詠まれたという。蔵王温泉は日本の近代短歌を確立した歌人・斎藤茂吉ゆかりの地だ。手前味噌だが、国語教師らしいチョイスと言えるだろう。

 旅程2日目、滞在する和室から授業の配信を始めた。ほとんどの教員は学校から配信をしていたようなので、私のリラックスした姿に驚いた生徒もいたことだろう。宿泊先は雰囲気のある温泉宿だったが、通信環境も安定しており、授業はつつがなく進行した。本当は自分がいる蔵王温泉を紹介し、なぜこの地を旅行先に選んだのか滔々と語りたかったのだが、オンラインでも思ったほど時間に余裕がなく、それはおあずけになった。

 結局、画面の向こうの子どもたちに旅情は伝わらなかっただろう。それでも「こういう自由な働き方もある」ということを、少しでも感じ取ってもらえたならば十分だ、東京に戻ったら学級通信を執筆して、蔵王温泉の源泉かけ流しの魅力や、『おくのほそ道』の面白さを語るつもりだ。


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