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今週の風の詩

第4038号 びわの木(2026.7.5)

                                                                   びわの木

                                                                                                                           生田つかさ

私の住む房総半島の初夏の訪れはびわの実りが告げてくれる。
びわ農家の営むびわ園はもちろん、山に自生するびわ、個人宅の庭木のびわ、
この土地のいたるところにびわの木がある。
そして、我が家の猫の額ほどの庭にもびわの木がすくすくと育っている。

さかのぼること11年前。
2歳だった娘がおやつに食べたびわの種をぼいっと土の上に捨てた。
土といってもそれはいつかの鉢植えで、
ぎゅうぎゅうに雑草が密集している既に忘れ去られた小さな植木鉢の中の土。
けれどもまさか。
そんな中でもたくましくびわの種は芽を出した。
もちろん、育てるつもりで蒔いた種ではなかったから、
ある日気が付いたら小さなびわの葉がすでにそこにあった。というふうに。

せっかく出てくれたのなら育てよう。
荒地から丁寧に掘り起こし、新しい植木鉢の土に移し世話をはじめた。

それから8年後。
私たち家族3人は自分たちにピッタリな家に引っ越した。
そこには猫の額ほどの庭もある。
一緒に越してきた鉢植えのびわの木も、ようやく地面の土に移してあげられる。
すでに小さな鉢の中でパンパンに根を回し、
背丈は小学5年の娘と同じくらいに育っていた。

地面の土に移されたびわの木は今まで以上にぐんぐん育った。
そして昨年。娘が中学校に入学した年。
びわの木は初めて花を咲かせ、実を付けた。
小さな実が3つ。
3人で1つずついただいてみる。
何ともみずみずしく、甘すぎず、酸っぱすぎず、
柔らかく温かな優しさが口にも心にも染みていった。
それでまた、今年は昨年の倍以上の実が生ってくれている。

当たり前だけど、びわの木は何もしゃべらない。
けれどもいつもそこにいて、私たちの声を聴き、風に揺れ、太陽に輝き、雨に濡れている。
たたずむその様そのものが、娘の成長と共にどんなときでも私たちを見守ってくれている、私たち家族の大事な心の一部となっている。

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