今週の風の詩
第4043号 天使になったダンゴムシ(2026.8.9)
天使になったダンゴムシ
相場(ペンネーム)
小さい頃から虫が嫌いだった。
子供を産んで5年。その時はついに来た。「ママ、ダンゴムシ飼いたい」
ああ、ついに来たか、と思った。洗濯物のポケットからダンゴムシが出てこなかっただけまだマシだけれど。「ダメ」とは言えなかった。自分で世話をすると言ってるし、ダンゴムシは鳴きもしないし飛びもしない。「これがダメ」が通用しない。
そうして我が家に来たダンゴムシは3匹。だんごちゃん、まるちゃん、ダンゴマル。
世話は一週間で母の役目になった。朝晩の霧吹き、餌替え、掃除。毎日見ているうちに、不思議と、段々エビに見えてきた。そのうち、餌を食べる様子がちょっと可愛く思えてきた。のそのそ枝を登っているのを見つけた時には、動いているのが嬉しくて、子供たちを呼んだりもした。予想外にも、この小さな生き物に、私の心は日々揺さぶられていた。
飼い始めて2カ月目、まるちゃんが脱皮不全で死んでしまった。悲しかった。涙が滲むくらいに。
捕まえてきた場所に埋めて、丁寧にお墓を作り、ダンゴムシの飼育ケースの横に天使になったまるちゃんの絵を描いた。
夫に「捕まえてこなければ死なずに済んだかもしれない」と漏らしたことがある。
その時、夫はこう言った。
「涼しい部屋の中で、君が毎日欠かさず霧吹きをして餌を取り替えていたあのダンゴムシたちは、野生で暮らすより何倍も贅沢で幸せな生活をしていたと思うよ」
生死についてのコメントは控えながらも、彼らが幸せであっただろうとだけ言ってくれた夫の言葉を、私は今も時々思い出す。




