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今週の風の詩

第3897号 秋の朝、北の町で(2023.10.22)

秋の朝、北の町で
                                稲田 孝史

 今から35年前以上、若かった私はバイクにテント・鍋・
寝袋その他雑多な物を積んで北海道を放浪旅していたこと
がある。

そろそろテント泊まりでは寒くなりだした初秋の頃、
 私は朝の釧路駅前交差点をトラックに続いてバイクを
傾けて曲がっていた。しかしその刹那、バイクはコントロ
ールを失横滑り、派手に転倒した。
 幸い怪我は無くバイクも走行に支障はなかったものの、
朝の通勤客が信号待ちしている面前で積んでいた荷物を
交差点内にぶちまけてしまった。
 焦りながらバイクを引き起こし道路端に寄せ「散らばった
荷物を早く拾わなくては」と振り返ると、なんと通勤客の
方々が荷物を拾い集めてくださっていた。そして信号待ちの
車は、停車したまま荷物が片付くのを待っていてくれた。

恥ずかしさと申し訳なさに恐縮していると、ひとりの中年男性
が、「お兄ちゃん、サンマを運んでるトラックの後を走ってた
でしょ。カーブでトラックの荷台からサンマの脂が撒かれて、
それにタイヤが取られたんだよ」「お兄ちゃん、まさに釧路の
旬にのったね!!」と言われた。その上で『秋のトラックの後
は気をつけろ!』が、釧路の常識だとも教えてもらった。

 放浪旅の思い出は沢山あるが、この日の釧路の方々の優しさと、
ちょっとしたジョークは忘れられない。
 今はあの頃のようにサンマも獲れなくなっている。無造作に
サンマをトラックに積むほど豊漁だった頃が遠い昔だ。

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