送り先1か所あたり
10,000円(税込)以上で送料無料

今週の風の詩

第3900号 空の巣症候群の先に見えたもの(2023.11.12)

空の巣症候群の先に見えたもの

                        くふた ふさ(ペンネーム)

 「体に気をつけてね。」転勤で名古屋へ行く次男の大きな
背中にむかって声をかけ送り出した後に感情を抑えることが
できずに、子供の様にワンワンと泣いてしまったのは去年の
九月のこと。八月には長男が一人暮らしを始めたばかりで三
人の息子のうち二人が次々と家を出ていってしまった。
 泣くだけ泣いたら少しずつ元気になってきた。中島みゆき
さんの「小石のように」という曲の「親鳥たちはかばおうと
するその羽根がとうにひな鳥には小さすぎるといつになって
も知らない」という歌詞を思い出したからだ。社会人の息子
二人と大学生の息子には小さすぎる私の羽根はもう、たたん
でもいいのかもしれない。
 その後、「子供が独立した後に虚無感に襲われる事」を空
の巣症候群ということを知りまさに言い得て妙!ストンと腑
に落ちた。
 私の羽根が小さすぎたことを示すかのように二人の息子は
自炊、掃除、洗濯はもちろん仕事の合間にジムじも通う。
家に居る三男もコロナ禍の大学生活は色々な不便や不満もあ
る中、出来ることをコツコツとやりながら活気ある日々を送っ
ていて、本当に息子達は気付けば大きく成長していた。
 空の巣症候群に押しつぶされそうになってから一年。
「帰るよ。」と連絡があれば布団を干して好物を用意して楽
しみに待つ。今年の十月には長男が結婚してかわいいかわいい
娘もできた。空の巣だと感じ悲しんでいた我家を今は、毎春賑
やかな鳴き声があふれる燕の巣のように皆が帰って来るのを楽
しみにしてくれるよう整えておこうと思う。
 息子達が自分の家に戻る時、結婚して家を構えた長男には
「またね。」と言い、独身の次男には「いってらっしゃい。」
と声をかける。いつでもこの燕の巣にのんびりしに帰って来て
ほしいから。

カレンダー
  • 今日
  • 定休日
  • 受付のみ・発送無し

土日祝日は発送がお休みです。水曜日も発送が休業の場合がございます。

ページトップへ