今週の風の詩
第3903号 CROSSROAD(2023.12.3)
CROSSROAD
ねこがすき(ペンネーム)
高校生の時にCROSSROADという名の喫茶店に入り浸っていた。 田舎にはあまりない隠れ家的な(本当に隠れてたのだが)喫茶店。 壁一面にはステッカーやフライヤーなんかが張り巡らされていてヤニだらけで、黒いソファーが3、4席。カウンター3席くらいのお店だった。 おぼろげな記憶だから実際はもっと狭かったかもしれない。 マスターは東京でギターを弾いてんだって話してた。 「田舎にいてもここにいながら世界中だって行くことができるんだよ。」っていつも話してた。その時は、おかしなこと言うおじさんだなぁ。ぐらいにしか思っていなかった。ぁ。ぐらいにしか思っていなかった。 それから何年後かに東京に来てもう20年以上経つ。時々、あの頃のことをふっと思い出す。珈琲飲みながら友達とダラダラ過ごしていたCROSSROAD。 いつも奥の席に座ってると、マスターが鼻歌を歌いながら珈琲を運んでくれた。あの店にもう一度行きたいが、今はもうない。 20歳を過ぎてから行った時は、純喫茶だけど「特別だよ」ってこっそりお酒を出してくれたこともあったっけ。 いつもあの扉の中に入ると異空間で外の世界とは全く違う景色が広がっていた。同じ場所にいても、どこへだって行くことができた。 ふと、マスターの言葉を思い出して今となっては「なるほど。」と思うのである。 | |