今週の風の詩
第3925号 50の手習い(2024.5.5)
50の手習い
もりまりも(ペンネーム)
近所にキックボクシングジムができた。
人生を折り返し、何か50の手習いを、とちょうど考えていたところだ。運動経験なし、超インドア派。にもかかわらず、何を血迷ったか即、入会してしまった。
「殴られるんだぞ、わかってる?」夫がうろたえる。いや、殴られるだけでなく蹴られもするんですけど、とはとても言えない。
育て方を間違えたと高齢の父が嘆き、恥ずかしいと息子たちも眉をひそめる。
これこそキックボクシングへの偏見ではないか。ならば私が変えてやるわ、と俄然やる気が湧いてきた。
それから8年。週3回のレッスンで肉体改造に成功し、今では懸垂も軽くできるしのぼり棒も登れる。パンチ力は女性陣の中で一番だと先生に褒められた。試合に出ないかとも誘われる。何をご冗談を、と思いきや、60代で試合に出場する女性も実際にいらっしゃるそうだ。
どうする私。
還暦リングデビューを目指すか否か・・・。
今や誰よりも強くなった私に、絶対に逆らえない夫や息子たちはともかく、更に高齢になった父の、心の安寧をかき乱すのは、少々気が引けてしまう。