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今週の風の詩

第3931号 蘇った万年筆(2024.6.16)

蘇った万年筆
三木玲奈(ペンネーム)

 万年筆を修理に持って行った。
四十数年前に買ったものだから、もう修理はできないかもしれない、
そんな思いが胸をよぎった。でもだめもとで行くだけ行ってみようと
思い、修理コーナーに向かった。
 修理コーナーは三階、文房具店のカウンターで万年筆をさし出すと、
若い店員さんが、「洗ってみましょう」
と、言ってくれた。分解してペン先、軸、枠何度も何度も洗って、みる
みるうちに洗浄用のフラスコがまっ青になった。
「キャプにインクがつまっているかもしれませんね」
そう言って綿棒を束ね、また洗浄をくり返した。そして、万年筆はまた
書けるようになった。
「これで大丈夫です」
「ありがとうございます。父に四十年以上も前にプレゼントされたもの
なんです」
 嬉しくて、亡くなった父を思い、涙がこぼれた。
「お代はいかほどですか?」
「けっこうです。ただこちらの品はもう部品がなくて修理できません。
大切に使って下さいね」
「はい。ありがとうございます」
 昨日の寒さがうそのような暖かな昼下がり私は、万年筆をペンケースに
しまいながら、幸せな気持ちでいっぱいになっていた。

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