今週の風の詩
第3938号 「紺色とピンク」(2024.8.4)
「紺色とピンク」
A.美代子(ペンネーム)
6才と4才の孫が近所の友達と夏祭りに行くとのことで、お揃いの浴衣を縫った。
ところがその前々日、上の子が「ねえ、ばあば、まあちゃんお祭りに行かないって。」と言った。
「エッ?あんなに踊りが上手なのに?。」
「違うの。まあちゃんはひとりっ子だからね私達がお揃いの服で遊ぶとしょんぼりなの。浴衣もね、お母さんが買ってくれたのが紺色だったんだって。」
「具合いが悪くなくて良かった。」
と安心してから布を買うため外出した。空は群青色の折り紙を貼り付けたようで、真っ白な入道雲はガッシリとスクラムを組んでいた。
太陽はジリジリと音を出し道路も光っていたが気にならなかった。
次の日は、まあちゃんが遊びに来てトランプをして賑やかだった。
私はそれぞれの名前を呼びながら3人に
「はあい、どうぞ出来ましたあ。」
と、ピンクの花柄の浴衣を渡した。孫が同時に声を合わせて
「どうもありがとう。おばあちゃん。」
とお礼を言った。
まあちゃんは自分のひざの上の浴衣を見て動かなかったが、パッと顔を上げて
「おばあちゃん、これ私の?後で返すの?」と真剣な目で聞いてきた。
「いえ、いえ、まあちゃんのよ、あげる。」
「ワアッイ、凄い、スゴーイッ。」
と拍手しては飛び上がるのを繰り返すので笑って私も手を叩いた。すぐに3人が浴衣を持って部屋の中をクルクル回ったのでお花畑のようになった。
ドドドーンッ。ドドドーンッ。と大太鼓が鳴り響く夜、踊りの列に入った3人の浴衣が目立った。
でも紺色の浴衣も可愛らしかっただろうなあ、と思った。